原毛価格の高騰

いよいよここに来て、原毛の入手が困難に…

3年程前より中国からの山羊毛が高騰していましたが、いよいよイタチが入手できなくなりました。
ヨーロッパでは動物愛護の関係で毛皮のコートなどの使用が少なくなり、胴体の残りの尻尾を筆に加工していた筆屋にも影響が出てきています。
また、中国でも食用の山羊より豚肉の消費が増えたため、副産物の山羊毛の量が減ってしまい、今後、原毛の入荷が心配です。

2013年より中国国内でも簡体字の見直しから、小学生~高校生まで授業で「繁体字」が指導されています。
中国国内の児童数はわかりませんが、かなりの人数が毛筆を使うとすれば、膨大な原料が必要になることは想像できます。
当然、ナイロン等の化学繊維は使われるでしょうが、この影響は計り知れません。

動物愛護の点ですが、前述のように、筆屋は服飾等の用途に用いられた残りの部分(尻尾)、副産物的な部分を用いて毛筆を作っています。
基本的な毛皮(コートなど)の使用が減れば価格も高騰します。
女性用のメイク筆にはかなりの量が使われています。
書道用の良い毛はまだそちらに流用されていることは少ないのですが、書道人口の減少と共に、筆の職人も減る現象に危機を感じます……。

当工房では、1994年以来価格を改定せず現在に至っていますが、今回の原材料の高騰で、1,000を超える筆の中には作ることのできない製品が出てきてしまったのも実情です。

1970年代に一度、山羊毛などの入荷が無く、大変苦労した時が有りました。
この時は、中国製の筆を壊し、毛の部分を加工しなおして作りましたが、現在の筆には化学毛 (ナイロン等)が使われており、これを選り分けることは不可能に近いと思います。

幸い当工房では、この時の自己学習で、手持ちの原料も相当量在庫が有ります。
しかし高騰してしまった原料では、筆の製作はどうなる事か……今後のことが不安です。
生かすも殺すも、筆職人は原料に掛かっています。

次回の報告で、良いお知らせをできればよいのですが。